経済学で出る数学

ワークブックでじっくり攻める:応用問題


フィッシャー方程式

名目金利を$i$,期待インフレ率を${\pi}^e$,実質金利を$r$とする. このとき近似を用いてフィッシャー方程式 \[ r=i-{\pi}^e \] を導け.

【解答】
今年の物価水準を$P$,来年の予想物価水準を$P^e$とすると,期待インフレ率は \[ {\pi}^e=\dfrac{P^e-P}{P}=\dfrac{P^e}{P}-1 \] である. $P$円を金融市場で運用すると$P(1+i)$となる. 運用後の値を翌年の予想物価水準で割ったものである \[ \dfrac{P(1+i)}{P^e} \] が買える財の個数となる. \[ {\pi}^e+1=\dfrac{P^e}{P} \] なので, \[ \dfrac{P(1+i)}{P^e}=\dfrac{(1+i)}{1+{\pi}^e} \] となる. 実質金利により買える財の個数は$1\to 1+r$個になりこれがこの値と等しいことから, \[ 1+r=\dfrac{(1+i)}{1+{\pi}^e} \] となる. 従って, \[ 1+i=(1+r)(1+{\pi}^e)\approx 1+r+{\pi}^e \] より, \[ r=i-{\pi}^e \] を得る.
【解答終】

【Further Reading】
平口・稲葉『マクロ経済学 入門の「一歩前」から応用まで [第3版]有斐閣ストゥディア(2020)
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