経済学で出る数学
ワークブックでじっくり攻める:応用問題
実質金利
$r$を名目金利,$f$をインフレ率としたとき,実質金利$r_0$を求めなさい.また$f\approx 0$のとき,
\[
r_0\approx r-f
\]
で近似できることを示しなさい.
【解答】
ある商品の現在の価格を$p$円,
とすると現在の$a$円の購買力は$\dfrac{a}{p}$である.
名目金利が$r$なのだから,現在の$a$円は将来の$a(1+r)$円になる.またインフレ率が$f$なのだから将来の価格は$p(1+f)$円となる.
従って将来の購買力は$\dfrac{a(1+r)}{p(1+f)}$である.
実質金利を使えば将来の購買力は$\dfrac{a(1+r_0)}{p}$となる.
従って,三者の利率には次の関係が成立する.
\[
(1+r_0)=\dfrac{1+r}{1+f}.
\]
$r_0$について解くと,
\begin{align}
r_0&
=\dfrac{1+r}{1+f}-1=\dfrac{(1+r)-(1+f)}{1+f}\\
&=\dfrac{r-f}{1+f}\\
&\approx r-f(f\approx 0 のとき)\\
\end{align}
【解答終】
【メモ】
最後の近似式は,$(1+r_0)=\dfrac{1+r}{1+f}$の両辺の対数をとって,
\[
\log_{}{(1+r_0)}=\log_{}{(1+r)}-\log_{}{(1+f)}
\]
とした後,
$x\approx 0$のとき,
\[
\log_{}{(1+x)}\approx x
\]
となる関係を使っても得られる.
【メモ終】
【Further Reading】
デービッド・G・ルーエンバーガー『金融工学入門』日本経済新聞社(2002)
佐野三郎『証券アナリストのための数学・統計学入門』ビジネス教育出版社(2015)
ふろく(2)応用問題 一覧へ