経済学で出る数学

ワークブックでじっくり攻める:応用問題


内部収益率の一意性


【問】 多期間にわたって,キャッシュ・フローをもたらす投資機会は,正のキャッシュ・フロー$CF_1>0,CF_2>0, \ldots ,CF_n>0$の合計額が,初期の投資額($=I$)を上回るとき,内部収益率は一意に決まることを示しなさい.

【解答】
Time Line Technique の表から, \[ \begin{array}{cccc} 年 & \hspace{4mm}CF\hspace{4mm} & \hspace{4mm}DF\hspace{4mm} & \hspace{4mm}PV\hspace{4mm}\\ \hline 0 & -I &/ 1 & -I \\ 1 &CF_1& / (1+r)^1& \dfrac{CF_1}{(1+r)}\\ 2 &CF_2& / (1+r)^2& \dfrac{CF_2}{(1+r)^2}\\ \vdots &\vdots& \vdots&\vdots \\ n &CF_n& / (1+r)^n & \dfrac{CF_n}{(1+r)^n}\\ \end{array} \] であるので,内部収益率は$r$についての方程式, \[ -I+\dfrac{CF_1}{(1+r)}+\dfrac{CF_2}{(1+r)^2}+\cdots +\dfrac{CF_n}{(1+r)^n}=0 \] の解である.ここで関数$f(x)$を次式で定義する. \[ f(x)=-I+CF_1x+CF_2x^2+\cdots CF_nx^n. \] このとき,$CF_1>0, CF_2>0, \ldots CF_n>0$なのだから, \begin{align} f^{\prime}(x)&=CF_1+2CF_2x+\cdots nCF_nx^{n-1}> 0\\[2ex] \end{align} なので,$f(x)$は狭義単調増加関数である.従って「中間値の定理」から得られる,$f(c)=0$となる $0 < c < 1$ は一意である.
【解答終】

【メモ】
$I=1,000$, $CF_1=2,150, CF_2=-1,155$とすると, \[ f(x)=-1000+2150x-1155x^2=-(11x-10)(105x-100) \] となり,内部収益率は一意ではない.
【メモ終】
【Further Reading】 藤田岳彦「ファイナンスに必要な数学」経済セミナーNo.666(2012)

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