経済学で出る数学

ワークブックでじっくり攻める:応用問題


債券ポートフォリオのデュレーションとイミュニゼーション

債券は利子率が変動することによって,債券価格も変動するリスクにさらされる.本問は利付債についてそのリスクの指標であるデュレーションがどうあれば,利子率の変動リスクから逃れうるのかを示す.

Time Line Technique を次のように改変したものの,最右辺の和を価格$P$で割ったものをマコーレーのボンド・デュレーションといい $D$ であらわす. \[ \begin{array}{ccccc} 年 & \hspace{4mm}CF\hspace{4mm} & \hspace{4mm}DF\hspace{4mm} & \hspace{4mm}PV\hspace{4mm} & \hspace{4mm}PV\times 年\hspace{4mm}\\ \hline 0 & -P &/ 1 & 0 & 0\\ 1 &CF_1& / (1+r)^1& \dfrac{CF_1}{(1+r)^1}& \dfrac{1\times CF_1}{(1+r)^1}\\ 2 &CF_2& / (1+r)^2& \dfrac{CF_2}{(1+r)^2}& \dfrac{2\times CF_2}{(1+r)^2}\\ \vdots &\vdots& \vdots&\vdots &\vdots \\ n &CF_n& / (1+r)^n & \dfrac{CF_n}{(1+r)^n}& \dfrac{n\times (CF_n)}{(1+r)^n}\\ \end{array} \] したがって, \begin{align} D&=\left\{\frac{CF_1}{(1+r)^1}+\frac{2CF_2}{(1+r)^2}+\cdots +\frac{nCF_n}{(1+r)^n}\right\}/P=\dfrac{\sum_{k=1}^{n}kPV_k}{P} \end{align} である($PV_k$は$k$年のCFの現在価値). \begin{align} P&=P(r)=\frac{CF_1}{(1+r)^1}+\frac{CF_2}{(1+r)^2}+\cdots +\frac{CF_n}{(1+r)^n}\\ P^{\prime}(r)&=-\frac{CF_1}{(1+r)^2}-\frac{2CF_2}{(1+r)^3}-\cdots -\frac{nCF_n}{(1+r)^{n+1}} \end{align} であることから, \[ D=-\dfrac{P^{\prime}(r)}{P(r)}(1+r) \] となる.

【問】 債券$B$の$n$年後の将来価値$FV$が,利子率$r$の変動にさらされない条件を求めなさい.

【解答】
 題意の条件を満たすためには,$B$の価格$P(r)$が償還$n$年の割引債と一致するようにすればよい.$P(r)=\dfrac{F}{(1+r)^n}$.なので,$P(r)(1+r)^n=constant$なのだから両辺を微分して, \[ P^{\prime}(r)(1+r)^n+nP(r)(1+r)^{n-1}=0 \] より, \[ n=-\dfrac{P^{\prime}(r)}{P(r)}(1+r)=D \] を得る.
【解答終】

【メモ】
投資期間$n$と,デュレーション$D$をポートフォリオによって一致させる投資戦略をイミュニゼーションという.ここも参照.
【メモ終】
【Further Reading】 青沼・岩城『EXCELで学ぶファイナンス3 債券・金利・為替』きんざい(平成14年)
ふろく(2)応用問題 一覧へ