経済学で出る数学
ワークブックでじっくり攻める:応用問題
定常的時間選好の割引関数
割引関数$D(t)$($t$は時間)に対して,$-\dfrac{D^{\prime}(t)}{D(t)}$を時間割引率という.
\[
-\dfrac{D^{\prime}(t)}{D(t)}\approx \dfrac{\dfrac{D(t+1)-D(t)}{1}}{D(t)}
=-\dfrac{D(t+1)-D(t)}{D(t)}
\]
なので$1$単位時間待つことに対しての,待てる度合いの変化率を表している.
時間割引率が一定値$k$の割引関数$D(t)$を求めなさい.
【解答】
\[
\dfrac{D^{\prime}(t)}{D(t)}=-k
\]
であるので,
\[
\Bigl(\log_{}{D(t)}\Bigr)^{\prime}=-k
\]
したがって$\log_{}{D(t)}=-kt+C$(Cは定数).これより,
\[
D(t)=e^{-kt+C}=ce^{-kt}.
\]
$c=e^{C}$とした.
【解答終】
【メモ】
『経出る』5.8節にあるように,時間に応じて変化する関数$f(t)$に対して,
その第$t$期における成長率はを$R(t)$とすると,時間が離散的に流れるならば
\[
R(t)=\dfrac{f(t+1)-f(t)}{f(t)}
\]
で考えられる.連続時間では時間感覚を$\varepsilon$とおいて$\varepsilon \to 0$とした極限として
捉えることができる.ただし,離散時間と同様に成長率を考えると
\[
\lim_{\varepsilon \to 0}\dfrac{f(t+\varepsilon)-f(t)}{f(t)}=0
\]
となってしまう.そこで連続時間の場合は定義を変え,時間間隔で割り
そこで$\varepsilon \to 0$とした極限として考える.つまり
\[
R(t)=\lim_{\varepsilon \to 0}\dfrac{f(t+\varepsilon)-f(t)}{f(t)}\times \dfrac{1}{\varepsilon}
=\dfrac{f^{\prime}(t)}{f(t)}
\]
で成長率を定義したのと同じ考え方による.
マイナスがついているのは$D(t+\varepsilon ) < D(t)$を調整するため.
【Further Reading】
大垣・田中『行動経済学』有斐閣(2014)
高橋泰城 note 行動経済学:定常的時間選好の数値積分
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