経済学で出る数学
ワークブックでじっくり攻める:応用問題
出版社と著者の食い違い
書籍$x$冊の売上に対する収入を$R(x)$,費用を$C(x)$,印税率を$r$とする.
著者は印税$Y(x)=rR(x)$を最大化しようとし,
出版社は利潤${\pi}(x)=R(x)-C(x)-Y(x)$を最大化しようとするものとする.
この時,出版社が売りたい部数と,著者が売りたい部数の間には齟齬が生じることを示しなさい.
【解答】
著者(author)の最適性条件は
\[
Y^{\prime}(x_A)=0
\]
なので$Y^{\prime}(x)=rR^{\prime}(x)$より,
\[
R^{\prime}(x_A)=0
\]
となる.
一方で出版社(publisher)の最適性条件は
\[
{\pi}^{\prime}(x_P)=0
\]
であり,
${\pi}^{\prime}(x)=(1-r)R^{\prime}(x)-C^{\prime}(x)$
なのだから
\[
R^{\prime}(x_P)=\dfrac{C^{\prime}(x_P)}{1-r}
\]
となるが,$C^{\prime}(x_P)>0$である限り,$R^{\prime}(x_P)=0$とはならない.
【解答終】
【Further Reading】
M. Hoy , J Livernois, C. McKenna, R Rees and T. Stengos, Mathematics for Economics second edition,
The MIT Press(2001)
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