経済学で出る数学

ワークブックでじっくり攻める:応用問題


ベイズの定理とシグナル:『経出る』練習問題9.1改題

【問】
 ある企業で社員の募集を行う.応募者のうち,生産性の高い人材は$p$, 生産性の低い人材は$1-p$である.生産性の高い人が資格を持っているのは$q_1$, 生産性の低い人が資格を持っているのは$q_2$であるとしよう.
1. 資格を持っている人を採用したとき,その人が生産性の高い人材である確率を求めなさい.
2. $q_1 > q_2$ならば,資格を持っている人を採用すると,無作為に採用する場合に比べて,生産性の高い人材を採用できる確率が高くなることを示しなさい.

【解答】
  1. $E_1$を生産性が高い応募者の事象,$E_2$を生産性が低い応募者の事象とする.$P(E_1)=p, P(E_2)=1-p$となる.事象$A$を資格を持っている応募者の事象とすると,$P(A\mid E_1)=q_1, P(A\mid E_2)=q_2$となる. ベイズの定理から, \begin{align} P(E_1 \mid A)&=\dfrac{P(E_1)P(A\mid E_1)}{P(E_1)P(A\mid E_1)+P(E_2)P(A\mid E_2)}\\ &=\dfrac{pq_1}{pq_1+(1-p)q_2}. \end{align}

  2. $q_1 > q_2$なので,$pq_1+(1-p)q_2 < pq_1+(1-p)q_1=q_1$ 従って, \begin{align} P(E_1 \mid A) &=\dfrac{pq_1}{pq_1+(1-p)q_2}\\ &>\frac{pq_1}{q_1}=p=P(E_1). \end{align}
【解答終】

【メモ】
 資格というシグナル(追加情報)を利用することで,確率をupさせることができることが分かる.
【メモ終】
【Further Reading】
小島寛之『使える!確率的思考』ちくま新書(2005)
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