経済学で出る数学
ワークブックでじっくり攻める:応用問題
価格弾力性とラーナー指数
独占企業の利潤関数を
\[
{\pi}(Q)=P(Q)Q-C(Q)
\]
とする.最適性条件を価格弾力性
\[
{\epsilon}_d=D^{\prime}(P)\dfrac{P}{D(P)}
\]
を用いて表せ.ただし$D(P)$は逆需要関数であるとする.
すなわち$P(D(P))=P$である.
【解答】
\[
{\pi}^{\prime}(Q)=P^{\prime}(Q)Q+P(Q)-C^{\prime}(Q)
\]
なので$1$階の条件から
\[
P^{\prime}(Q)Q+P(Q)-C^{\prime}(Q)=0 \Leftrightarrow P(Q)(1+P^{\prime}(Q)\dfrac{Q}{P})-MC
\]
ここで$MC$は限界費用である.
$P(D(P))=P$なのだから,合成関数の微分によって
\[
P^{\prime}(D(P))D^{\prime}(P)=1
\]
なので.
\[
P^{\prime}(Q)=P^{\prime}(D(P))=\dfrac{1}{D^{\prime}(P)}
\]
である.従って
\[
P(Q)\Bigl(1+\dfrac{Q}{D^{\prime}(P)P}\Bigr)=MC
\]
簡略化して書くと
\[
P\Bigl(1+\dfrac{1}{{\epsilon}_d}\Bigr)=MC
\]
これより
\[
\dfrac{P-MC}{P}=-\dfrac{1}{{\epsilon}_d}
\]
【解答終】
【メモ】
左辺$L=\dfrac{P-MC}{P}$をラーナーの指数またはマークアップ率という.
この値の解釈は次の通り.弾力性が大きくなるにつれて,$L$はゼロへと近づく.
逆に非弾力的になるにつれて,$L$は大きな値をとる.
需要の価格弾力性が大きい(小さい)市場では,企業はより低い(高い)価格をつける.
【メモ終】
【Further Reading】
西村淳一・山内勇『産業組織論への招待』新世社(2025)
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