経済学で出る数学

ワークブックでじっくり攻める:応用問題


ポートフォリオ最適化問題をラグランジュの未定乗数法で解く【『経出る』7.5節】

マーコビッツのMVモデルをラグランジュの未定乗数法で解く問題.基本的なソースは今野浩『理財工学I』日科技連(1995)だが,完全にパクるのはまずいので(笑),数値例をひねり出してみた.(作成:2015.11.20)


【問】 ラグランジュの未定乗数法を使って,次の最小化問題を解きなさい. \begin{align} \min_{x_1,x_2,x_3}& V(x_1,x_2,x_3)=5x_1^2+20x_2^2+5x_3^2-16x_1x_2-8x_1x_3+12x_2x_3\\[2ex] s.t. \quad & 7x_1+10x_2+9x_3=9\\[2ex] &x_1+x_2+x_3=1 \end{align}

【解答】
  1. ラグランジュ関数を作ると, \[ {\cal L}(x_1,x_2,x_3,\lambda ,\mu)=5x_1^2+20x_2^2+5x_3^2-16x_1x_2-8x_1x_3+12x_2x_3 +\lambda (9-7x_1-10x_2-9x_3) +\mu (1-x_1-x_2-x_3). \]

  2. 各変数で偏微分してイコールゼロとおくと, \[ \left\{ \begin{align} 0=&10x_1-16x_2-8x_3-7\lambda - \mu \qquad (1)\\[2ex] 0=&-16x_1+40x_2+12x_3-10\lambda - \mu \qquad (2)\\[2ex] 0=&-8x_1+12x_2+10x_3-9\lambda - \mu\qquad (3)\\[2ex] 0=&1-x_1-x_2-x_3\qquad (4)\\[2ex] 0=&9-7x_1-10x_2-9x_3\qquad (5) \end{align} \right. \]

  3. 連立1次方程式なので,基本,中学生でも解けるはず.$\lambda$と $\mu$を(1)〜(3)式を用いてまず消去する. したがって,$x_1=\dfrac{7}{50}$,$x_2=\dfrac{14}{50}$, $x_3=\dfrac{29}{50}$.

【解答終】

【メモ1】
次のデータの分散共分散行列から出るポートフォリオの分散が,本問の目的関数.ここを参照. \[ \begin{array}{|c|c|c|c|c|} \hline 銘柄&S_1&S_2&S_3\\\hline 第1期&6&16&10 \\\hline 第2期&4&12&12 \\\hline 第3期&8&8&6 \\\hline 第4期&10&4&8 \\\hline \end{array} \]
【メモ1終】
【メモ2】
エクセルのソルバーで計算させた結果,$x_1=0.14, x_2=0.279999999, x_3=0.580000001$となった.誤差の範囲でしょう.
【メモ2終】

【Further Reading】 今野浩『理財工学I』日科技連(1995)
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